ロンドン旅行記5日目

朝からたっぷりと朝食をとり気合いを入れる。

今日から再びロンドン市内観光だ。

ちょっとした遠出が続いていたので地下鉄とバスで行かれる安心感はあれども、地下鉄や観光地にはスリが多いともきくので、そういう意味ではドキドキドキドキ。財布とスマホとパスポートは絶対にとられてはならぬ。気合いをいれていく。

まず向かったのは朝8時から開いている聖ポール大聖堂。きっかり朝8時に到着す。

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丸い大きなドーム型の建物。やっぱり見えてくるとテンションがあがりますな。

聖ポール大聖堂はチューダー王朝弁護士シャードレイクという小説によく出てきたりしてシャードレイクもここを通ったのだろうかとわくわくしながら横道を歩く。(もともとの聖ポール大聖堂は火災で焼けてしまったらしい、という事を後にオーディオガイドで知ることになる)

朝早いこともあってか入口がどこなのかわからないくらい人がいない。

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多分、ここ?みたいな感じでおそるおそる入ると受付の人がいた。

ここでもガイドが借りられて、当たり前のように存在する日本語オーディオガイドのありがたさを噛み締める。

一歩踏み出せば中はどこをみても見事な装飾。気が遠くなりそうな細やかさ。そしてなんといってもドーム。

あの外からも圧倒的な存在感を放っていたドームは内側から見上げた時は鳥肌が立つくらいの美しさだった。豊かな絵画と精密な模様、自然光の作る陰影が丸いドームを彩っている。

ものすごくカトリックの教会っぽい。

しばらく椅子に腰掛けてオーディオガイドに入っていた説話などをきいたりして過ごした。

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そんななか小学生の集団がぞろぞろと歩いてきて地下へ続く階段を降りていく。なんだろうと思ってついていくと地下の礼拝堂の一室に入っていった。一緒に入ろうとしたら引率の先生らしき人に、9時半まで貸切だからと言われてしまう。

しばらくして美しい歌声が聴こえてきた。

本当に素晴らしいハーモニーで聴き入ってしまったくらい。

地下はやはり墓だらけで(いや地上も墓だらけではあったが私はもう墓慣れをしていたのであまり意識していなかった)その静かな空間に響く音楽。

なんとなくだけどここで眠る人々は安らかだろうなと思った。少なくともウェストミンスター寺院で眠るよりは。

再び地上へあがるも何やら列が出来ていて、そういえばこの聖堂は上へ上がれるんだなということを思い出す。せっかくだしと列に並んで登ってみることにした。

昔パリでノートルダム大聖堂の上に登った時を思い出す。狭くて長い螺旋の階段。その先にはこの展望。

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本当にお天気に恵まれていたよな。

高いところからロンドンを見る機会を今回あまり設けなかったので登れてよかった。達成感。

数多の墓を踏み聖ポール大聖堂を出たところで観光客のカップルに写真を頼まれたのでおふこーすといって撮ってあげた。ついでに私も撮って貰う。慣れたもんよ?

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聖ポール大聖堂の目の前のバス停からバスに乗りナショナルギャラリーへ向かう。バスにちょっと慣れてきたので2階の1番前に乗ってみた。おお、高い。

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アトラクションみたいで面白かった。でも道がなかなか混んでいる。

進まぬー。

えっちらおっちらなんとかかんとかナショナル・ギャラリーへ。

ロンドンの美術館や博物館のすごいところは無料だというところ。太っ腹にもほどがあるよ。

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どどーんとした入口に数多の観光客と共に並ぶ。

すぐに中へと通された。

入口にあったQRコードをかざすと部屋のナンバー毎に各作品の解説が読めるページへと飛んだ。

なんてスムーズでスマートなんだろう!と感激しながらぐるぐると部屋を回る。

有名な絵がたくさん。好きな画家の絵もたくさん。

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本当に無料でいいのだろうか。これなんか有名なひまわりだよね、と思いながら思う存分歩き回って絵を鑑賞した。

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この美術館の素敵なところは自然光で絵が展示されているところ。太陽が雲に隠れると絵の印象がかわる。部屋全体が薄暗くなるからだ。

私には見たかった絵があってその絵の前に立ったときちょうど部屋が薄暗くなったので、なんだからぞくりとした。

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レディ・ジェーン・グレイの処刑、と題されたこの絵画は1833年に描かれている。

なので実際にこの処刑が行われた時代のものではないのだけれど、とても恐ろしい絵だった。

レディ・ジェーン・グレイは9日の女王とも呼ばれた悲劇の女王で、ヘンリー8世が死にその息子のエドワードが死んだ後に一瞬即位してすぐに反逆罪で処刑された人だ。ヘンリー8世の最初の王妃であるキャサリン・オブ・アラゴンの娘、メアリー1世がこの処刑を決めたという。

ジェーンはまだ16歳だったらしい。突然女王になったのにいきなり捕らえられそのまま。その様子を後世の人が想像して描いたのだろうが、なんだかリアルだなと思う。

怖いのは下に敷かれた藁だ。これは首を切った後に溢れるであろう血を吸わせるためのもの。これはなんだろう、と思わせる配置と、その役割を知った時の怖さが巧妙だ。

斬首は当時身分の高い人の処刑方法だった。アン・ブーリンもトマス・クロムウェルもキャサリン・ハワードもこの方法だ。

絵の中のジェーンには抵抗する力すら残っていないようにみえる。彼女と共に夫や家族も捕えられた。そして彼女が幽閉された部屋からよく見える場所で、彼らは処刑されたという。死を待つ部屋の中の方がよっぽど恐ろしかったろう。そんな時間を過ごした人にとって、処刑はもはや救いだったのかもしれない。

この絵は想像よりもとても大きくて誰しもが足を止めて見入っていた。いや、見入らざるをえない。そんな絵だった。

ゆっくりと3時間くらいギャラリーで過ごしてから移動。本当はバスで行こうと思っていたが、道が混んでいたのか全然来ないので地下鉄でロンドン塔へ向かう。

 

ここもずっと来たかった場所だ。

アン・ブーリンが処刑され、埋葬された場所。

まさに先程みた絵画の舞台だ。

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駅を出るとこの威圧感。物々しい。

そもそもここは征服王ウィリアムがたてた要塞だったそうな。ここは我々が支配した!という強いメッセージ。力を誇示する建物である。

それが宮殿になったり動物園になったりしたわけだが、だけれどやはりここは処刑場としての印象が根深い。その他にも殺された2人の王子の骨が出てきたりと、やはりなにかと物騒な場所である。

オーディオガイドを借りて中を巡ることにした。

まず最初に目にしたのは、この反逆者の門である。

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ロンドン塔に連行された人々はここから中に入ったという。この階段をまさにアン・ブーリンも登ったのだろう。

ケイト・ブランシェットエリザベス女王を演じた映画の冒頭でも、ここからロンドン塔に入っていたと思う。恐ろしいシーンだったのでよく覚えている。

なんだかいきなり処刑された場所とかに行くのは躊躇われたため、征服王の時代の展示に向かった。素晴らしく静かで厳かな礼拝堂があった。

ここは来なければ訪れなかったろうな。やはり実際に訪れてみないと知れないことがある。

 

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さて。こちらがホワイトタワー。

ロンドン塔のはじまりの場所。

ホワイトタワーという名前は小説や映画など色んなところできいていたけど実際に見るとやはり圧倒される。そしてホワイト。約1000年前からここに建って色々な物を見てきたことだろう。王子達の骨まで発見されているし。

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いなくなっちゃいけないカラスを横目に中へ。中は甲冑やら武器やらがたくさん展示されていた。

ヘンリー8世のものも多かった。

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こちらヘンリー8世の甲冑①。

1人目の王妃といい感じだった時代のものだと一目でわかるHとKのエンブレム。ハンプトンコートて、HとAの同じようなものをみただけあって複雑な気持ちになる。

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そしてこちらもヘンリー8世の甲冑②。

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見てくださいこのヘンリーのヘンリーを。

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ご立派ですこと。

ご立派な割にあまり役に立たなかったのだなあとしみじみ眺めました。不敬ですかね。でも私はヘンリー8世が好きじゃない。仕方がないのだ。

他にも様々な武器やら鎧やらがあった。剣や斧や盾や。武器酔いしそうなくらいに。なんでここにあるのー?という鎧兜に笑いが込み上げてきた。

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武器も興味深かったけど私的には小さな窓から入ってくる光や

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細い通路の方にくらくらした。
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かっこいい。すごい。この興奮を綴るための語彙力がほしい。荒々しいこの壁面の感じをみて。お触りも自由なのよ。思う存分触ってきた。

そして展示の最後の方にあったのは

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こちら。

見覚えのある。先程の絵画にも描かれていたわね。実際に使われたものらしくうわーおって感じ。

純粋にただただ恐ろしかった。

これで首を斬られて死ぬなんて(アン・ブーリンのときは切れ味が良い剣で実行されたらしいが)

出口に向かいながら心を整える。ホワイトタワーを出たら、アン・ブーリンの最期の場所に行こうと決めていた。

 

そこは日向で知らなかったら通り過ぎてしまうような場所だった。タワーグリーン。かつて処刑台が組まれた場所にオブジェが置かれている。

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ここで処刑された人々の名前が刻まれていた。

その中にはもちろんアン・ブーリンの名前もある。その昔、処刑というのは格好の娯楽だったらしい。人々はこぞって人が殺されるのを見に行ったそうだ(日本もそういう傾向があったけどね)

ただここで処刑された人々は身分が高く見せ物という感じではなかった。見せしめだった。

史実でも小説でも映画でもドラマでも、アン・ブーリンの最期は潔く描かれている。事実そうだったんじゃないかと思う。彼女は賢い女性だった。残していく娘のことやブーリン一族のことを最期まで意識して行動したのだろう。

ロンドン塔には小さな教会があって、そこにアン・ブーリンは埋葬されたと伝えられている。このオブジェのちょうど目の前にあるセント・ピーター・アド・ヴィンキュラ王室礼拝堂という場所で、ここは普段閉まっているとのことだ。外側からだけでも見られたらなと思っていたが、なぜかその日は扉が開いていた!!!!

え??なんで??!え?!いいの???

ということで奇跡的に中に入ることができた。

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アン・ブーリンはじめキャサリン・ハワード、レディ・ジェーン・グレイが埋葬された場所だ。どこに埋葬されたかはわからないらしい。どこかの通路の下らしい。

ただとにかく彼女たちはここで眠っている。

なぜかはわからないが、普段開いていない場所に足を踏み入れることができてよかった。静かに安らかな眠りを祈った。アン・ブーリンの生まれたお城に行って最期の場所にも来られた。もう悔いはない。

 

その後ビーチャムタワーへ。ここでは実際に囚人達が囚われていたという塔の部屋に入った。壁にたくさんの彫り物。囚人達が彫ったものがそのまま残っているらしい。

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ここで過ごした囚人のほとんどが処刑されていて、レディ・ジェーン・グレイの家の紋章もあった。この小さな窓からしか光が入らない空間で。いったいどんな気持ちだったんだろう。処刑はおそろしいがそこに至るまでもおそろしい。
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外に出てこの暑い中ご苦労様な衛兵さんを横目に

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ブラッディータワーへ。
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こちらは身分の高い人が幽閉されたお部屋。エリザベス女王の寵愛を受けたエセックス伯ロバート卿が長い間幽閉されたといわれている。海を渡り自由に旅した人をひとところに閉じ込める。彼にとってはとてもストレスだったろうな。プロジェクションマッピングの演出があり逆に怖かった。ロバート卿は幽閉された後やっぱりここで処刑されている。

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後は有名すぎる2人の王子について。こちらも変な演出であらわされていてとても怖かった。突然少年たちの囁き声が部屋中に聞こえるんですもん。ひい。やめてほしい。

 

何時間くらいいたのだろう。広い上に見たい物が多かったのと見応えのある展示物ばかりだったのとで大満足である。

ここも多くの幽霊が目撃されるという場所だが、やはり会わなかった。良い天気だったしな。

せっかくきたのでイケオジにツーショットをお願いしセルフィーで撮ろうとしてたら、近くにいたマダムが私とるわよ!と撮ってくれた写真がこちら。

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ありがとうマダム。ありがとうサー。私は満足です。

外に出るといかにもロンドンにきました!という写真が撮れそうなスポットがあり、スペインからきたという大家族に写真を頼まれたので、私も撮ってもらった。良い天気。

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君ひとりぼっちなの?!みたいな反応を受けつつ大家族の皆さんに見られながらピースができる私のメンタル。つよつよ。良い人達でたくさん写真を撮ってくれた。

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外から見た反逆者の門。アン・ブーリンを巡る旅はここでひと段落した。

本当はウィンザー城にも行きたかったんだけど、それは次回にしようと思う。

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はあ、行かれて本当によかったなあ。

それにしても!!!!喉が!!乾いた!!どん!!

ということでパブへ。

ビールの注文だけうまくなっていくわたくし。

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このギネスが冷え冷えでとてもおいしかった。五臓六腑にしみ渡るとはまさにこのこと!黒ビールうまいぜい。

この日もいささかスケジュールを詰めすぎたのでお昼を食べられなかったんだけど、朝ごはんをもりもりに食べるせいかそこまでお腹は空かず。

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ホテルの近くのパブでもビールを頼みまったりと過ごした。パブでまったり過ごせるようになるなんて慣れってすごいよな。
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その後、散歩をしてご飯を買って食べてシャワーをあびてすぐに寝た。たくさん動いたからな。