ロンドン旅行記7日目
今日は日曜日。イギリスでは日曜日にサンデーローストなるものを食べるのだとガイドブックに書いてあって、これはぜひとも食べたいと思っていた。
なので朝ごはんは軽めに。でも紅茶はおかわりを貰ってたっぷりといただいた。
当初の予定では日曜日の朝にロンドン塔のセント・ピーター・アド・ヴィンキュラ王室礼拝堂で礼拝を受けようと思っていた(日曜日の礼拝の時くらいしか中には入れないという前情報だった)が、先日訪れたときに入ることができたのでやめておいた。
思えば毎日予定を詰め込んでいたせいで結構早起きばたばた生活だったのだ。この日は本当にゆっくり準備して遅めの時間にのろのろ出かけた。
目指すはウィリアム・モリス美術館。Victoria線の終点の駅まで行くので少し遠く。駅からはバスで。
公園の一角に建った小さな建物がそれだった。もともとはウィリアム・モリスが幼少期を過ごした家なんだそう。日曜日ということもあり、そして郊外ということもあり、なんだかのんびりした場所。いやしかしこの日も良い天気だった。
こちらの美術館もやはり無料。中に入るとミュージアムショップとカフェがあり、その先に展示室があった。なんというか本当にふらっと入れる場所。公民館みたいな空気のなかしれっと様々なものものが展示されていた。
ウィリアム・モリスについて知ったのも大学生の頃。当時の私は自分の学問の分野以外の知識を得ることに楽しさを覚えるタイプの人間で、興味や気の向くまま様々な授業を受けた。そのなかでウィリアム・モリスに出会った。
イギリス学入門だか英国美術についてだか忘れてしまったが、教室のプロジェクターに映し出されたそのデザインの美しさには思わず目を奪われた。自然なのに計算されていて緻密なのに大胆な、伝統的なようでいて新しい模様のような絵画のようなそれ。そしてそれらは人々の生活のなかで使われるアイテムを彩ったわけである。たくさん生産され注文を受け商品として納品された。しかもヴィクトリア朝という激動の時代のなかで。
なんだか頭がくらくらしたことを覚えている。
そんな彼の生涯を辿る展示をGoogle翻訳をフル活用しながら辿った。
学生時代中世の文化に憧れてステンドグラスを作ったり壁画を製作したりしたそうで、新しいのに昔っぽい印象なのはそういうところからきてるのかなあなんて思ったりした。
あとはあんまり知らなかったんだけど彼の人生や人間関係も複雑だった。結婚したジェーンさん、刺繍も上手で美しく、もともとメイドで教養がなかったらしいがスポンジのようになんでも吸収し極めちゃった才女でモリスにとっていわゆるミューズ的存在だったらしいが、モリス以外の芸術家とも色々と極めていたらしい。
そ、そうなんだ。ふ、ふーん。
そんなどろどろな話を読みつつなんとも贅沢な展示を眺めたり参加型の展示に取り組んだりした。
ステンドグラスの型に紙をおいて鉛筆でこすってみたり、さまざまな柄や色を紙の上に置いてデザインしてみたり。
結果私にはあまりデザインセンスがない!ということがわかった。薄々勘付いてはいたが。見たことある模様をいい感じに組み合わせると永谷園のお茶漬けのパッケージを床に落としたら犬が噛んでぐしゃぐしゃにしましたみたいな柄ができて笑ってしまった。写真を撮り忘れたんだけど。
そしてこういう途中のものをみるのも興味深く面白かったし
この家具たちもいいなー。ほしいなー。今もなおおしゃれでスタイリッシュ。
床に。かっくいー。
このいす。とてもいいっす!ね!
こんな椅子に一度でいいから座ってみたいけど家にあってもおそれおおくて座れないわ。恐れ多いっす。みたいな。
外観よりも展示物のボリュームがすごかった。一つのデザインをどのように作っていくかみたいな過程まで丁寧に解説してくれていた。
有名ないちごどろぼうさんもみつけた。
お土産屋さんも充実していてモチーフの小物がたくさんあってかわいかった。
ロンドンにはもう一つモリスが建てて住んだ家も美術館としてあるようだが、そこは予定が合わなかったので今回はやめておいた。
帰りは駅まで歩いてみた。ケンジントン周辺とはまた違う、人が住んでいる感じがありありと伝わるような道。
いい感じにお腹が空いてきた。
ので、みつけておいたサンデーローストのお店へと向かう。再び地下鉄へ。駅を出るとお店の場所がわからなくてものすごい迷った。加えてこの日は風が強くて、道路脇に生えている木々から目に見える大きさの花粉が降ってきていた。これ、目に入ると激痛なの。私の反射神経が悪いのかロンドンの花粉が素早いのか。目が真っ赤になった。
なんの花粉なんだろうあれは。海外の人ってよくサングラスしていてなんでだろうと思っていたけど紫外線だけではなく花粉も防ぐためなのでは。
私もサングラスを持っていけばよかったよ。
そんな感じでやっとこさお店につく。ビールとサンデーローストを頼むと、ここでこの旅行最大の伝わらない事件が発生した。アレルギーはないですか?という質問に、ないですと返しただけなんだけど、私のカタカナ発音アレルギーは驚くほど全く伝わらなかった。アレルギーはアレルギーという発音じゃないのだということをはじめて認識したわたくし。アラジーみたいな。そんな感じなのだ。Google翻訳を見せてやっとご理解いただきたが発音を正しく勉強するのって大事だったんだなぁ。言語とは難しいなと改めて感じながらビールを飲み待っていると
きました。なんかすっごいボリューム。
昨日の夜ご飯の肉もなかなかだったがこれは。
お肉だけじゃなくソーセージやじゃがいも、人参など野菜もたくさん。肉汁のソースを全体的にかけていただく。
何よりお肉の上にぼふん!と鎮座しているのは大きなシュークリームの皮のようなやつ(ヨークシャープディングというらしいよ)見た目は大きいがかりかりで軽い。
サンデーローストをいい感じに訳するとしたら、まさしく日曜日のご馳走!熱々で美味しいロースト料理。見た目だけでじゅうぶん心踊るのにチキンはしっとり柔らかくジューシー。お野菜は甘く柔らかく、ソースをかけると更に味わい深くなる。
たぶんこれ家族でわいわい食べるものなんじゃなかろうか。そんなことに気付いたのは日本に帰ってからだった。サンデーロースト。心から美味しくて気付けばひとりで綺麗にぺろっと平らげていた。
とはいえ、お腹はぱんぱん。
ここの所がっつりしたものを食べ過ぎてロンドン1人フードファイターみたいになってる。腹ごなしに次の目的地まで歩いて移動することにした。なんかいい感じの建物を横目に向かったのは
ウィンガーディアムレヴィオーサ!あなたのはレヴィオサー!(なぜいきなり浮遊の魔法のハーマイオニーなのか)
キングスクロス駅!
ここはハリポタの9と3/4番線がある駅ということで一度きてみたかった。
今回の旅は割とチューダー朝にフォーカスしてしまったが私はハリポタも好きなのだ。
頭の中は完全にヘドウィグのテーマ。
大きな駅で乗り降り大変そうだなと思いながらこの駅にあるというハリポタショップを目指すと
なんか謎に行列ができた場所が。
ここだー??
なんでこんな並んでるんだろうと思ったのも束の間。
ここにはハリポタショップがあるだけではなく、9と3/4線体験をしかつその様子を写真におさめてくれるという親切すぎる場所がショップの前にあるのだ。この列はその写真の順番待ちらしい。
9と3/4体験。そんなの。やりたいにきまっているじゃないか!!!と列に加わる。
どうやら自分の好きな寮のマフラーをつけ杖を持ちカートをおす姿の写真をプロに撮って貰えるようだ。ポージングは係の人が細かく指示しておりシャッターをきる瞬間にマフラーを良い感じにはためかせる係の人までいる。ここで撮った写真はショップで買えるらしい。
ただし誰かがその様子をスマホで撮ってくれる分には無料という。なかなか一人旅に厳しいシステムである。そして並んでいる人を改めて見回すとほとんどが団体客。
ということはみんなはウィズリー家で私はハリーということ。ハリーも9と3/4番線への行き方がわからず、声をかけていたじゃないか。
いざ!!
勇気を振り絞り写真撮ってくれないか後ろのウィズリー家のパパにお願いす。そして撮って貰った写真がこちら。
すごい。魔法みたい。特にマフラー。はためかせる係の人がプロ。ポージングもすごく細かくて足の位置とか杖の向きとかまで指定された。
1人でこれはなかなか恥ずかすいーと思ったがやってみると楽しくてノリノリかつ満面の笑みである。
写真を頼んだウィズリー家の人はめちゃくちゃシャッターを押してくれていてパラパラ漫画が作れるレベルだった。さすがウィズリー家のパパ。良い人だ。ゴム製のアヒルの使い方について是非とも教えてあげたい。
キングスクロス駅、サンデーローストを待っているとき近くにあるみたいだから寄ってみようかななんて思い付きで訪れてみたが、やはりハリポタ好きの人にはぜひ訪れて欲しい場所である。ショップではグッズを買いそこでもハリポタの世界を楽しめてよかった。
再び地下鉄で移動。
お次はテート・ブリテンへ。地上へ出ると再び巻き散る謎の花粉に目をやられる。痛すぎるんだわさ。ほんとうに。なんでこんなに入ってくるんだろうね、目に。
目をやられながらなんとかかんとか進むと見えてきました。こちらも立派な美術館。
そして、例の如く無料。
思ったんだけど美術館は日曜日に行くべき。
平日の美術館やお城には小学生が社会科見学で来ていることも多く結構騒がしいことも多かったんだけど、日曜日のテート・ブリテンは穏やかな静けさに包まれていてよかった。
ロビーに置かれたソファでおじいさんがお昼寝をしていた。朝起きて礼拝にいってパブでビールを飲んで一休みするかと美術館にやってきたのかな。気持ちよさそうだった。
展示室も本当に誰もいなくて静かで、見たい絵や心惹かれた絵が多かったこともあり、かれこれ3,4時間くらいいたんじゃないだろうか。
絵の飾られている展示室にはなんの説明もなくなんの意味があるのかわからないオブジェが置かれていてそれも気になってまじまじと見てしまったわ。
まずは向かったのは有名なオフィーリア。
鮮やかな絵だった。なのにこわい。
自然は生き生きとそこにあるのに彼女の視線はもうこの世をみていない。纏うドレスは次第に重くなり身体は水底へと導かれていく。静かに死に向かって浮かび流れていく。
この絵はたしかに美しいのにひどく恐ろしい。人は悲しみのなかで狂ってしまうと死に抗うことすら忘れてしまうのだろうか。
見られてよかった。
私は同じミレーの絵ならこっちの腰の痛そうなお姉さんの方が好きだけどね。
長時間座ってると腰痛いよねー。マリアナ。
こちらもシェイクスピアの作品から着想を得ているそうだがまだ読んだことのないものだった。今度探してみよう。
この絵も幻想的でぜひ見たいと思っていた。絵の中の灯りに心踊ったのは吉原格子先之図以来である。
夕方の薄闇のなか美しい草花のなかで提灯に灯りを灯している子ども達を描いた安らかな絵。
ふんわりしたお洋服の可愛らしいこと。
平和で綺麗な絵っていくらでも見られる。
そしてこちらもある意味平和。
夕方の薄闇のなか新しい墓の準備をしているシスター達を描いた絵。この絵には妙に惹かれてしまってしばらくみていた。人は必ず死ぬ。死は痛みと悲しみをもたらす。のに同時に救済と永遠の平穏をもたらす。日が沈み仕事を終えたシスター達は眠る前に祈るんだろうな。蝋燭を灯して。
私は地位や名誉や財産を追っている人を見ると、どうせ死ぬのになにしてんだろと思いがちなんだけどそこに近いような遠いような感覚をこの絵から感じた。
そんな皮肉なことをいわないで一生懸命人生を全力で生きたいもんである。
解説にはミレーはメンデルスゾーンの作品から着想を得てこの絵を描いたとあって、音楽と絵画の繋がりや広がりを見かけると嬉しくなってしまうね。
あとはこの別に多分作者はなんということもない感じで描いたんだけど妙に印象的でこわい絵や
これでもか、これでもかというターナー。
ターナーは本当に特別に展示が数部屋に渡ってされていてすごかった。ターナー好きにはたまらないんだろうな。雲や霧をここに持ってきました!みたいな絵。
こちらはマクベス夫人を演じた女優さんを描いたものらしい。みんなシェイクスピア好きね。
なぞのオブジェもそこかしこにありなんなのかはわからないが
異様な存在感を放っていた。
なんなんだろう。
そう考えさせることこそが
目的なんだろうな。
すごい怖かったのは2つトランク(ファンタスティックビーストに出てきそうな)が並んでいて、その間をふとみると、それぞれのトランクから黒色の長い髪の毛が出ていて絡まっていたやつ。
写真を撮ると呪われそうだったのでもはや撮らなかったけどぞっとした。なんだったんだあれは。
などなど。たくさんの絵をみて感じて解説を読んで。美術館で過ごす時間は濃い。
帰りに不思議なオブジェをみつけた。
かっこいいな。
これにもきっとなにか目的があるんだろうな。
ホテルの最寄りのスーパーに行くと、日曜日なので営業時間が早めに終わっていた。お昼に食べたローストがまだ残っていたのでいいか、と思ったけど夜にはお腹が空いてしまって非常食に持ってきたカップラーメンを食べた。
これがものすごく美味しかったー!!
醤油の濃いスープの味が胃に沁みたね!!
その日、寝る前に私のロンドン旅行もそろそろ終わるなと思いながらごろごろしていたら、祖父の容態が思わしくないというLINEが入ってきた。
しかし待てども続報は入ってこず。気付いたら眠ってしまっていた。