ロンドン旅行記3日目
少しだけ遠出をするので早起きをして早めに朝食をいただく。
今日は朝食で部屋の番号も通じた。昨日より上達したのでは(向こうが覚えてくれただけでは)
朝食はスクランブルエッグとトマトで煮た豆、ソーセージにマッシュルームの炒めたやつ。トマトの焼いたやつ。芋の揚げたやつ。伝統的なブリティッシュブレックファーストってやつだ。ほとんど昨日と同じメニューだったがもりもりいただいた。パンも5個くらい食べる。朝は大事だ。
昨日は地下鉄、ボート、バスに乗ったが、今日はナショナルレイルというやつに乗る予定で、ちょっと心配でドキドキしていた。ロンドンから少し離れた場所。目指すはハンプトンコートパレス。ヘンリー8世とその王妃達も多く滞在した宮殿に行く。幽霊も出るという噂の場所なのでそういう意味でもドキドキだ。
会ったらどうしよう。まあきっと英語で話すだろうし何言ってるかわからんだろう、と勇気を出して出かける。
外は幽霊とは無縁であろう晴天。綺麗に晴れていて清々しい。
Wimbledonまで地下鉄で行きそこから乗り換える。ナショナルレイルの乗車券はTrainlineで購入した。オイスターでも乗れるらしいがピンと来なかったため。改札にe ticketをかざすとすぐ開いてあとは電車をベンチで待つ。
ハンプトンコート駅につくとまさかの日本語で案内がでていた。なんか嬉しい。いっつあすもーるわーるどみたい。
橋を渡り近付くにつれて見えてきたハンプトンコートパレス。
門をくぐるととどーんと堂々たる姿が奥の方に。
そして左横にはカラフルなお花たちが。色の組み合わせが素敵。自由にのびのびと、自然なお花畑といった感じ。良い季節にきたなあ。
ハンプトンコートはトマス・ウルジーというヘンリー7世、8世の御代に力を持った家来が贅を尽くして建てたところで、彼がヘンリー8世に捧げたことで国王の拠点のひとつとなった場所。
ウルジー卿はヘンリー8世と1人目の王妃キャサリン・オブ・アラゴンの離婚をうまく進められずに信頼を失い失脚している。そこらへんはウルフ・ホールというドラマで丁寧に描かれていた。
昔からいわゆるチューダー朝といわれる時代の人々や歴史に興味があって、そこらへんの時代の本やら映画やらドラマは一通り履修済みなのだ。
今回の旅もチューダー朝の空気が感じられる場所に出来るだけ訪れたいと計画した。
なのでここはまさに憧れの場所のひとつだったのだ。チューダー朝の空気を感じられる。今日は閉園までここにいる予定だ。
事前にチケットを買っていたのでまずはオーディオガイドを借りることに。
看板も日本語があったくらいなので、日本語の
オーディオガイドあるはずと思ったら、やっぱりあってこれがまた素晴らしいやつだった。
特にヘンリー8世エリアのオーディオガイドは史学者達の解説を聞けるタイプと、トマスというヘンリー8世の家来が邸を案内してくれるドラマタイプの2通り用意されていて豪華だ。
ヘンリー8世エリアはそもそもどこから?というくらい広いので係りの人にきいてみた。ここをまっすぐ行って左、みたいなので言われた通りに向かう。中学のとき英語のリスニングでやったやつ。ここにきて役に立つとは。
どこもかしこも精巧な装飾。そしてこの茶色の外壁にどうしてもときめく。
たどり着いたこの階段はまさにヘンリー8世の時代に人々が使っていたものらしい。そんな階段を上がっていいのか?
この扉もまさにヘンリー8世の時代に人々が通っていたものらしい。いいんですか本当に?!
階段と扉だけで興奮をおさえきれないでよくこの先に立ち入れることができたなって感じの場所がその先には広がっていた。大広間だ。
ここはヘンリー8世と2番目の王妃、アン・ブーリンが結婚した時代に建てられた場所。贅を尽くした空間で天井なんかいくらでも見ていられる気がした。当時はもっと鮮やかだったらしい。今でもこんなに圧倒されるのに。
王というものの権力がいかに大きかったか、いまだに思い知らせる。
どこもかしこも見事だなとしかいいようがないが、その時オーディオガイドが気になることを言ってきた。
ヘンリー8世とアン・ブーリンの徽章の話である。婚礼時、ここには2人のHとAが混ざった徽章が沢山飾られていたらしい。
しかし婚礼後、世継ぎとなる男子に恵まれず、アン・ブーリンは反逆罪を言い渡されてロンドン塔で処刑されてしまった。
ヘンリーはそのタイミングで徽章も全部とってしまうように家来たちに言い渡したが、奇跡的に1つだけ外し忘れて、残っているものがあるという。。。
そんなの!!みたいにきまっているよ!!!!
しかしながらオーディオガイドの案内に従ってもなかなかそれはみつからない。
30分くらい探しただろうか。どうしても見つからないのでスタッフっぽい人を捕まえてきいてみる。
するとスタッフの人はにやりと笑って部屋のはじの壁の方を指差してくれた。
おわかりいただけただろうか。
ヘンリーのHとアンのAがあわさっている!!!
これだー!!!!!!
他は全部HRなのにこれだけ違う!!
この日一番興奮しましたとも!!!!
これ見つけにくいよねーとスタッフの人も言っていたけどこれは本当に難しい!!
そしてオーディオガイドの案内はなぜこれの場所を教えるときだけちょい雑なのだい!!!
広間には大きな椅子が二つをおかれていて王と王妃の椅子なのだということがわかる。
せっかくなので王妃の席に座ってみた。そして写真を撮って貰った。
隣の空席ぐあいがなんとも寂しいが、私は男の子欲しさに首を斬る男との結婚なんてごめんである。これでよいのだ。
この大広間以外にもここには様々な部屋があって、どこもかしこもチューダー朝の風がびゅんびゅん吹いていた。
家臣達が王を待つ部屋とか、小姓の控室とか、当時のトイレまで。
しかしなんといっても有名なのが、ゴースト・ギャラリーである。
ヘンリー8世の絵も飾られているんだけれど、ここは5番目の王妃、キャサリン・ハワードの幽霊が出ると言われているところだ。
手前から奥にかけてこの廊下を泣き叫びながら走っていくとのこと。廊下は走っちゃいけません!って感じだが彼女には彼女の理由があるのだ。
キャサリン・ハワードはその若さと美しさから国王を釣るために差し出された。彼女の後ろには地位や名誉を欲する男たちがいた。アン・ブーリンやジェーン・シーモアと同じだ。
国王はドイツの方からやってきたアン・オブ・クレーヴズを気に入らず、キャサリン・ハワードに夢中になったらしい。
キャサリン・ハワードは当時は多分16歳とか、そのくらいだったんじゃないだろうか。
それなのに年寄りでかつ古傷が腐り悪臭を纏い気分が山の天気ほどに変わりやすいきもおじたる国王の相手をしなきゃならなかったんだからそれだけで悲劇だ。王は彼女を余の棘のない薔薇と呼んだらしい。いやはやきもすぎる。本当によく頑張ったと思う。
そして彼女にも男の子をもうけなければならないという重圧があった。私はきもおじにはもうその機能はなかったのでは、と思う。だってもうお年ですから。だけれど作らなければならなかったし彼女はまだ若い女の子だった。
キャサリン・ハワードは王以外の若いイケメンといたした、という反逆罪で捕らえられてロンドン塔で処刑されてしまう。
このゴースト・ギャラリーは反逆罪でハンプトンコートパレスで捕らわれた彼女が、この先にある礼拝堂で祈る王の元に走って向かい慈悲を乞おうとした場所だという。彼女の魂はいまもその日を何度も何度も再現している、ということでここに現れて泣き叫びながら走り去っていくらしい。
残念ながら幽霊は見られなかったが、ここのベンチに腰掛けたとき急激な眠気に襲われた。ただの時差ぼけ?それとも……?
いわくつきの場所ということで、広大な敷地をもつハンプトンコートパレスでも、このゴースト・ギャラリーで具合が悪くなる人が圧倒的に多いとのこと。
やはりここには幽霊がいるのだろうか。
私には見えなかっただけで??
ちなみにハンプトンコートパレスで1番有名なのはキャサリン・ハワードの幽霊だろうが、ほかにも幽霊は目撃されている。ウルジー卿、ジェーン・シーモアやヘンリー8世、そしてアン・ブーリン。本当にここは結構な幽霊スポットなのだ。私の霊感がなさすぎて1人も見られなかったけれども。
さて、ゴースト・ギャラリーの先を進むと礼拝堂や評議会の部屋などがあり、また広い廊下へ出る。ここにはヘンリー8世の家族写真的な絵画が飾られていた。
これである。真ん中がヘンリー8世。その右隣にいるのが3番目の王妃、ジェーン・シーモア。
左にいるのがエドワード6世。ジェーンは彼を産んですぐに亡くなった。(そしてその数年後ドイツから4番目の王妃アン・オブ・クレーヴズがきて、でもだめでさっきのキャサリン・ハワードが王妃になる、とそういうわけだ)
ジェーン・シーモアの隣にはエリザベス1世、エドワード6世の隣にはメアリー1世が描かれている。
私が驚いたのはメアリー1世の後ろの女性である。
彼女の名前はハンナ。道化である。
え?!って感じである。私は彼女を知っているのだ。まさかこんなところで会えるとは。
フィリッパ・グレゴリーが書いたブーリン家の姉妹2愛憎の王冠という本があるが、その主人公こそが聖なる愚者、女道化のハンナなのだ。ハンナって実在してたんだ?!というかここから着想を得たに違いない!!?!
思わぬ出会いにまた興奮してしまった。
こういうの本当に楽しい。びっくりしたー。
ヘンリー8世エリア、大満足。このコースは3回くらいまわり直したりして楽しんだ。
1巡めは史学者のオーディオガイドをきき、2巡目はトマスの案内を受け、3巡めはじっくりと何もきかないで回った。大広間に至っては何度も何度も近くにくるたびに入ったりして楽しんだ。
途中女王陛下のお出ましがあったりして(Your Majesty!をみんなで言わなきゃならないところがあって人生初のゆあまじぇすてーを経験。一度でいいから言ってみたかったので嬉しい)楽しかった。
個人的にはトマスが案内してくれるオーディオガイドが没入型でとても良かった。ヘンリー8世と6番目、つまり最後の王妃のキャサリン・パーの婚礼の日に招待された客人というていで邸内を回れる。トマスはヘンリー8世の家来なので、彼の悪口はなにもいわない。悪いのは全部王妃だ。本当によくできているなあと思った。
次はヘンリー8世時代の厨房やワイン倉庫を再現したエリアへと向かう。
ワイン倉庫係は重要だったそう。
庭にはワインの噴水があったし(客人にワインをそこで振る舞ったそうな)
なんだかパイが食べたくなる。気付けば14時。4時間ほどヘンリー8世ゆかりのエリアにいたらしい。
ここのカフェではチューダー朝のパイ、とやらが食べられるらしく向かってみた。
どーんと大きなパイはなかなか良いお値段。お酒は売って無かったのでたっぷうぉーたーとやらをいただく。
パイは思いの外熱々でざくざくで美味だった!
このチューダー朝のパイ、ヘンリー8世がここハンプトンコートパレスでテニスをした後に好んで食べたものを再現したそうだ。
お昼ご飯も食べ少し休憩したので他のエリアにも足を伸ばす。ウィリアム3世のエリア、ジョージ1世のエリアはまた異なる装いだ。時代が違うしな。
こちらは王に謁見する間にたどり着くまで、たどり着いてからの王のプライベートみたいなガイドだった。当時の王は食事や寝ているところを一般公開しなきゃならなかったらしく、それはなかなかきついなと思ったりした。全く異なる時代の装飾、美術品、調度品、王というものの力のあり方が一つの場所で見られるなんてすごい贅沢な場所だ。
こちらとっても綺麗!と思ったが当時この絵はコスト削減の手法だったらしい。えーじゅーぶんごーかなのですがー。
それから立派な階段を立派に上り下りしてみたり
武器の装飾を眺めたり
窓から広大すぎる庭を眺めたりした。
ジョージ1世についてあまり知らなかったんだけどなかなか面白そうな人だ。本を探してみようと思った。
そんな見所満載のハンプトンコート。やはりヘンリー8世エリアが1番人気らしく、他のエリアは空いていて結構貸切みたいな感じだった。ここまで人がいないとなると、幽霊が出るのでは、なーんて出現を密かに期待したが、おらず。
良い天気だったのでお庭の散策もさせていただいた。
庭師がきれいに手入れしている庭は美しく、そして何より薔薇が綺麗な季節。良い天気でたまに吹く風が気持ちよかった。
庭はなぜか梅干しの匂いがした。肥料のにおいなのか、お花の匂いなのか。
それにしても本当に広い。
1日いたが迷路の庭とかもあるみたいだったがそっちの方までは行けなかった。
閉園時間も近づき、さて帰るかと駅に向かいながら帰りの経路を検索すると……ホテルの最寄り駅の地下鉄が止まっていた。なんか故障したらしい。信号機が。なんということでしょう。
あろうことかホテルの最寄りの駅が通行止めの区間にばっちり入っており、行きと同じ経路は使えなさそうだ。
ハンプトンコートはちょっとだけ郊外なので、とりあえずロンドン中心に近付いておきたい。いい感じの駅で降りていい感じの地下鉄に乗ろうといい感じの電車に乗った。
私は焦っていた。なぜか。
グローバルWi-Fiの充電がピンチっぽかったからだ。昨日の夜うまく充電ができていなかったらしい。こやつが終わったら私も終わる、。
とりあえずなるべくたくさんの地下鉄の路線が通った大きな駅で降りてみたがそこでWi-Fiの充電が尽きた。わおわお。ここでか。
自分がデジタル社会にどれだけどっぷり浸かっていたか思い知ったよね。Wi-Fiがないとなんにもできないのよ。
頭が真っ白になったが、とりあえずスリには気をつけようと貴重品の入ったポシェットの上からカーディガンを羽織ってみた。
それから万が一の時のために携帯していた地球の歩き方の付録でついていた地図と路線図を取り出してみる。まさかこれを開く日がくるとはね。
今自分がどこにいて、ここからホテルに1番近い駅はどこなのか、わかればいいのだ。
なんとなくあたりをつけたが自信がないので駅員さんに話しかけてみた。
駅員さんはポンコツイングリッシュを駆使してなんとかホテルに帰ろうとしている日本人を可哀想に思ったのか、めちゃくちゃ丁寧に教えてくれた。ここの駅で降りな。ここで乗り換えて、わんつーすりーふぉーふぁいぶ、しっすく!おーけー?みたいな。いい人。
それでなんとか地下鉄に乗ったんだけど、1番の戦いは地下鉄の駅を出てからだったね。
普段Google MAPに頼りまくって生きている方向音痴の人間が、通りの名前を頼りに歩くという冒険。地図をみて歩いたのなんて、いつぶりだろう。
ようやく見慣れた通りに出た時には喉がカラカラに渇いていた。のでパブでいっぱいいただいた。
しみたねー。もう心から美味しかった。
でもWi-Fi無しで帰ってこられたのだということは生きる力、結構あるのではと自信に繋がった。
それからホテルに帰ってスーパーに行って夜ご飯とビールを買った。そしてすぐ寝た。もうぐっすり。時差ぼけとは。気持ちの良い疲れだった。