6月某日

6月になってすぐの日、富山の祖母を訪ねた。

新幹線から降りると線状降水帯とやらの影響から電車が止まっておりバスでえっちらおっちら向かう。久しぶりに会った祖母は背が縮んだように思えたが、相変わらずパワフルで圧倒された。

翌日からはよく晴れたので畑仕事へと駆り出された。絵に描いたような里山という感じの集落は田んぼと畑と山だらけで、最寄りのコンビニまでは徒歩35分という田舎である。

ほーほけきょとやけに上手に鳴く鳥の声を聴きながら人参を収穫したりそら豆を収穫したり玉ねぎを収穫したりした。特に玉ねぎは1000個ほど作ったそう。それを全部2人で収穫し納屋に運んだのだからそうとうな労働量である。腰やら太ももやらが筋肉痛でやられて、帰りの新幹線ではシートに腰掛ける時も一苦労だった。やれやれ。

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夜はうしがえるがもーもー鳴いていた。古い家の静かな室内。仏壇の目の前に布団を敷くので夜はなんとなく怖い。でも疲れているからすぐに眠れた。怖いといえば私は蜘蛛が大の苦手なのだが、田舎にいるともうそこらじゅうに当たり前のようにいらっしゃるので、いちいち気にしていられなるのも不思議だ。半日もすれば台所で皿を洗いながら、蜘蛛の巣に捕まった小蝿が蜘蛛に糸でぐるぐる巻きにされる様子なんかも冷静に眺めることができるようになる。蜘蛛の捕食対象が人でなくて本当によかったと思うし、蜘蛛があのサイズ感でいてくれて本当によかったと思った。

何をするでもなくただただ働かされた日々。朝から畑にいて気付くと19時になっているからすごい。

近所の92歳のおばあちゃんから柿の葉を貰ってうどの葉と一緒に天ぷらにしたり、そこらへんに生えてるくわの実を食べたりした。くわの実は黒々としていて青くさく、甘酸っぱいつぶつぶした種がいつまでも口の中に残っていた。そういえば小学生の時、下校中に食べたな。つつじの蜜もたくさん吸ったし、柘榴の木にも登って柘榴をたべた。頭に小さな蟻をたくさんくっつけて帰ったものだ。そんなことを思い出した。

なんだか日本昔ばなしみたいな時間だった。

祖母には仕事をしていないことをとうとう言わなかった。そもそも結婚をしていない、ということについてものすごく心配しているので、そこに無職というパワーワードが加わったら更に心配させてしまうだろう。それはかわいそうだ。

祖父にも会ってきた。施設で過ごしている祖父はまた一回り小さくなったような気がしたが、声は相変わらず大きかった。